京都は洛北・松ヶ崎に建てられたこの住宅は、現代の町屋をイメージして設計しました。
コンクリート打放しと木の格子と土塗壁といったあまた存在する材料からなるシンプルな外観を呈しています。
敷地は北山通りから一筋南に下がった区画、北と東の2面道路の角地にあります。敷地からは北の正面に五山の送り火のひとつ「妙法」の妙の字と、北東には比叡山と法の字が見えるはず。しかし、比叡山の方向にはマンションがすでに着工済み。眺望・借景はあまり期待できない状況でした。
クライアントからは、南側にまとまった庭が欲しいこと、仕事上外国の人との付き合いがあり和室が欲しいこと、家で仕事ができる書斎が必要なこと、ゆっくりと入れる見晴らしのよい浴室が欲しいこと、バスタブは絶対に水中照明付のブローバスであることが告げられました。
建物は東西の二つのコンクリート打放しのBOXと、その間に黒塀仕立ての玄関ホールを嵌め込んでいます。間口いっぱいのタテ格子と黒塀仕立ての外壁や土塗り壁は、現代の町屋をイメージしたものです。庭を確保するため北に寄せた建物のプライバシーはタテ格子のフィルターを通すことによって守られています
内部は、素材の持ち味を活かしたKYODO style、シンプルモダンにまとめています。通りに面したファサードは閉じられた感じになっていますが、玄関を入ると雰囲気は一転、庭に面したホールの全面ガラスの開口と吹抜け空間が広がります。書斎などのハイサイドライトも特徴的で、明るく、気持ちのよい空間を演出しています。
次は、敷地のロケーションを生かすための工夫です。東側のブロックはキッチンとリビングダイニング、2階は書斎、主寝室、庭に面した浴室となっています。バスタブはもちろん水中照明付ブローバスです。キッチンとダイニングは平屋でその上部をデッキとし、比叡山が望めるようにしました。西側のブロックは1階が和室、2階が二人の子どものための個室となっています。この屋上からは「妙」が間近に望め、さらに比叡山から大文字山、京都盆地を一望することができる贅沢な場所となりました。デッキから屋上に通じる階段も用意されています。
この住宅は,、現代の町屋、現代のコンクリート住宅、コンクリートの数奇屋建築など、いろいろな読み取りができる、そんなおおらかな精神性を秘めた住宅です。
主な用途:住宅
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上2階
建築面積:101m2
延床面積:168m2