都立武蔵高等学校は、1940(昭和15)年設立の東京府立第13高等女学校を前身とする、武蔵野市に位置する高等学校です。1950年には、現在の東京都立武蔵高等学校と改称され、男女共学校となっています。
旧校舎は、1963年より鉄筋コンクリート造の増築工事や改修工事が繰り返し行われて来ましたが、老朽化が著しく、21世紀に向けて「学習環境を改善し、ゆとりのある空間を確保する」ことを目的に、建設時期の比較的新しい格技棟を残して全面改築が計画されました。改築に当たっては、次の「未来性」「環境」「経済性」に特に配慮しました。
<未来性>
武蔵高等学校は60年余りの歴史を持つ伝統校です。古いものを継承しつつ、そこに新しい風が吹き込まれ、新たな伝統として育まれていく、そんな伝統を踏まえつつ未来性を志向したデザインを心がけました。
アプローチ正面の管理棟のファサードはカーテンウオールとし、軽快で透明感のある未来志向の表情を創り出しています。グラウンド面から見える体育館棟には、伝統的な土壁風の素材感ある壁面の中に、大面積のコンクリート打放しを嵌め込み、上部は連窓サッシのガラス、下部は連続したアルミルーバーを用いることで、重厚感と軽快感が共存する形態としています。
<環境>
学校敷地は、周辺に武蔵野の趣を色濃く残している地域の一角を形成しています。計画地から少し北に行くと玉川上水があり、玉川上水の両岸には、樹木が生茂り、色とりどりの鯉が泳いでいます。敷地周囲も中層集合住宅、低層戸建て住宅で囲まれており、緑豊かな地域となっています。
改築にあたっては、この緑の多い環境を保全するために既存校舎棟の廻りにある樹木をできるだけ移植することとし、緑を残すよう配慮しました。
また、地球環境保全の視点から、雨水の再利用、環境負荷の少ない機器類・材料を採用しています。学習環境に対しては、日当り・風通しが一番良好な南側に普通教室棟を配置しています。また、生徒がくつろげる空間として大きな中庭を配置し、シンボルツリーとして「クスノキ」を植え、卒業してからも思い出のひとつに残ることを願っています。
<経済性>
全体配置は仮設校舎の必要のない(既存校舎を使用しながら工事のできる)南側配置としています。建物地盤面は、既存地盤面より約60cmほど上げ、場外への最終残土処分量を減らすことによって、経済性を追求しながら、再資源化を図っています。
<体育館>
アリーナの屋根は張弦梁構造とし、コストの低減と工期短縮を図っています。
張弦梁構法は鉄骨の梁材と束材及びケーブル材で構成されたハイブリッド構法(曲げ部材である梁と引張部材とによる混合構法)であり、これらを旨く組み合わせて、力の流れを調整・制御することで梁材の小部材化と軽量化を図ると同時に、軽快で開放感のある空間を形成しています。またケーブル材の緊張力の管理を行うことで低ライズの屋根形状とし、校舎棟との調和をめざしました。
東京都:武蔵野市
主な用途:高等学校
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上4階
建築面積:4,671m2
延床面積:12,764m2