愛称をエリプスと名づけられたこの建物は、開基140周年記念事業の一環として計画された、レストラン・カフェ、会議室、コンベンションホール機能を備えた産学交流会館・同窓会館などを複合した施設です。
敷地は小金井キャンパス内の東側に位置し、キャンパスの周囲には住宅地が広がっています。キャンパス全体は東西南北軸のグリッド上に整然と建物が配置されており、この全体のグリッドに対し、建物軸を45°に振り、シンボル性を高める計画としました。
建物は全体の平面形は楕円形と矩形を用い、キャンパスの中でシンボル性を持ちながら、やわらかく親しみのある建築物をめざしています。さらに、全体の楕円形の中にエントランス・省エネ展示スペース(ゼロエミッションセンター)をさらに小さな楕円形で構成し、「入れ子構造」とし、象徴的なスペースを形成しました。
楕円は二つの焦点をもち、この2焦点からの距離の和が一定になるような点の集合によって作られる曲線であり、本計画の要である楕円の平面形も、「産」と「学」を2つの焦点とみなしその融合を目指す記念会館の基本理念を形象化したものです。
また、本記念会館は、究極のZEB(ゼロエミッション建築)として、低炭素化を図り、キャンパス内のエネルギー使用の見える化の事業を集約、達成するための拠点として計画されました。ZEB化の事業はNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「次世代建築物統合制御システム実証事業」の補助事業を活用しています。
キャンパス全体の省エネルギーを見据え,本会館を拠点建物「ゼロエミッションセンター」として位置づけ、隣接した建物と連携した建物群として,再生可能エネルギー・省エネルギー型の設備運用の実証的研究を行なうため、次のような研究開発の目標を設定しました。
1) 一建物としてCO2削減率35.7%を達成する設備計画および運用手法を実証する。
2) 隣接する建物とエネルギー融通を行なう場合の効率的設備運用手法を実現する。
3) 講義棟や研究棟などが連携してCO2排出削減を図る可能性,技術的要件を明らかにする。
この事業における研究成果に基づき,長期的には小金井キャンパス全体における再生可能エネルギーの積極的活用方策,省エネルギー建築設備導入方策について検討する基礎資料を提供することを目指しています。
「ゼロエミッションセンター」は、“パッシブデザイン建築”と“アクティブシステム設備機器”の最適な組合せ・融合によってゼロエミッション化の達成を図っています。
“パッシブデザイン建築”により太陽・風・気温・地表熱の自然エネルギーを建物の温熱・光環境に活用し、空調・換気・照明のエネルギー消費量を最小限に留めます。建物の配置や形態による環境への配慮を行なうと、その効果は建築物の寿命が続く限り有効となります。また、パッシブデザインの採用により“アクティブシステム設備機器”の容量を抑制することが可能となり,設置スペースの削減に繋がり必然的に経済性も向上することになります。
ここでは、以下の三つの目標をたて、ゼロエミッション化を図っています。
第一の目標はパッシブ建築とアクティブ設備を総合的に有効活用することによって建物単体での省エネルギー設備計画や運用の具体的方法を確立させることにあり、第二の目標は建物群連携による省エネルギー拡大を実証することであります。既存建物の省エネルギー化の促進も重要な課題であり,高性能な建物と連携させることを通じて省エネルギーに結びつける手法の有効性を示すことがここでの眼目であります。これは多数の建物から構成される大学キャンパスを統合的に見る視点を提供し,エネルギーを融通するインフラのあり方について新たな実証的知見データをもたらすものとして期待されるところであります。
第三の目標は本事業を核として省エネルギーの将来展開を図ることを目指しています。大学キャンパスは多様な負荷を持つ多数の建物からなっているため、個々のエネルギー負荷を踏まえながら建物間の連携や協調を実現するために必要な要件や可能性を整理することは、将来的なキャンパス省エネルギー化の推進にとって重要であると考えています。
以上の三つの目標を達成する過程で得られる実証的データは、一建物の省エネルギーにとどまらない幅広い応用の基礎となり、大学から社会に発信する貢献につながるものと期待しています。
東京都:小金井市
主な用途:産学交流会館・同窓会館
構造:鉄骨造
階数:地上3階
延床面積:2,236m2