この施設は、既設施設の老朽化に伴い、近江八幡市のプロポーザルによって設計が行われることになりました。火葬場は、必要不可欠の施設でありながら地域住民にとっては敬遠されるという困難な課題を内包しています。そこには、地域住民の理解、協力を要し、そして馴染める施設である必要があります。そこで、葬送というきわめて個人的な場をいかに「地域に開く」かということを主要なテーマとし、「ワークショップ」・「郷士性」・「儀式性」の3つのキーワードを掲げ設計しました。
基本計画段階において地元の意見を採りいれるべく、主に地域住民代表からなる近江八幡市火葬場検討委員会を、ほぼ週に1回の割合で計6回開催し、自由な意見交換の場を設けました。
豊臣秀次の城下町として栄えた旧八幡町には、今も歴史的な町並みが残されています。この様な豊かな自然と歴史的町並みは、近江八幡で育った人々の原風景といえ、そこに生きた故人を偲ぶ場であり、周辺住民にとっては日常的に目にさらされる建物であることから、この原風景をデザインソースとしました。
葬送という行為はきわめて個人的で独立性の高いものです。そこで、従来の告別・炉前・収骨の一連の葬送行為を流れ作業で処理する方法に替え、この3つの行為を一本化にし、完全独立で行える形式を採用しています。つまり、告別・炉前・収骨を1室にまとめた各々に入り口を持つ炉前・収骨ホールを2つ設けることによって、火葬本来の儀式性をもたせています。また、独立したホールの配置は、告別・炉前・収骨を2組同時に、隣を意識・配慮せずに行うことが可能です。
主な用途:斎場
構造:鉄筋コンクリート造、木造
階数:地上2階
建築面積:2,338m2
延床面積:2,376m2